虫歯はさまざまな原因が重なって発生します。
①微生物
②食物
③唾液
④遺伝
この①~④を順にお話していきたいと思います。
まず、①の微生物。お口の中には何百種類もの異なる微生物種がいます。主に細菌と真菌です。そして唾液1ml中には1億から10億の微生物が存在しています。
細菌は歯面のバイオフィルム(歯垢)内で蓄積していきます。バイオフィルムはその中の細菌が分裂したり、唾液から新しい細菌が加わったりして成長していきます。この様にしてバイオフィルムは安定した生態系歯面上に作り、多くの細菌の中で最も適応した細菌種が優勢になっていきます。
そして、虫歯になる最も重要な環境因子は砂糖のような発酵性炭水化物と唾液です。糖類を多く摂取すると細菌から歯を溶かす原因の酸の産生が上昇します。また、歯垢もますます増えて歯面にべったりと付いていきます。
唾液は防御因子として働きます。歯垢内の細菌によって産生された酸を薄めて中和する働きがあります。しかし、唾液が出にくいドライマウスの方は唾液の中和効果が低くなってしまいます。
虫歯の発症に強く関係している細菌とはどの様な細菌でしょうか。
代表的なのが、ミュータンスレンサ球菌とラクトバチラス菌です。もともと赤ちゃんのお口の中には存在しない細菌です。
では、これらの細菌はどこから感染するのでしょうか?
外界から来た細菌がお口の中で定着する。つまり、他の誰かのお口の中の細菌が源泉になっているのです。ミュータンスレンサ球菌がお口の中で定着するためには繰り返し授受の機会があることです。
例えば、親が味や温度をチェックするために口をつけたスプーンで、ベビーフードを直接そのまま赤ちゃんに与えるなどです。もし、その食べ物が糖類で味付けされていたら感染のリスクはさらに高くなると予想されます。
しかし、ミュータンスレンサ球菌が定着するには、歯も必要です。まだ歯がはえていない赤ちゃんの場合、粘膜表面は常に上皮細胞が剝がれ落ちて新しくなるため、細菌も一緒に飲み込まれてお口の中からいなくなります。ですから、ミュータンスレンサ球菌の定着に最も感受性が高いのは、1歳半から2歳半の間の子供です。
この時期には歯が萌出し、他の細菌種がまだ安定した生態系を確立していないからです。この時期に子供と最も時間を多く過ごすお母さんはその事を十分理解し、気をつけてあげると良いですね。
早い時期にミュータンスレンサ球菌が歯に定着したお子さんは遅い時期に定着または全く定着していないお子さんに比べて、早くからまた多くの虫歯を発症するリスクが高くなります。
また、ミュータンスレンサ球菌とラクトバチラス菌は高齢者に菌数が多く認められるとのデータがありあす。これは加齢と共に唾液の分泌量が減少したり、菌が停滞しやすくなるためです。